セッテピエゲってなに?普通のネクタイとの違いやその魅力をご紹介!
セッテピエゲとは「7つ折りのネクタイ」
セッテピエゲ (Sette Pieghe)とは、イタリア発祥のネクタイのひとつ。イタリア語でSette(数字の7)とPieghe(折り目)の文字通り、7つ折りのネクタイを指します。英語ではSeven Fold Tieと言います。
通常の2倍の生地を用い、熟練した職人の手仕事によって、一本一本仕立てられています。
セッテピエゲの魅力
一番の魅力は、その軽やかな巻き心地と、エレガントなドレープ感です。
通常は芯地を用いてネクタイを成形しますが、セッテピエゲには芯地を用いません。その代わりに一枚のシルク生地を7つに折り畳み、剣型のネクタイ型に仕立てるのです。シルク生地の軽さと畳むことによる柔らかな作りによって、まるでスカーフを巻くかのような優しい巻き心地に仕上がります。
普通のネクタイとの違い
-仕立て-
ただ「7つ折り」のネクタイとだけ聞くと、簡単そうに思えるかもしれません。しかし、その製法は「芯入りネクタイを10年は作らないとできない」と言われます。なぜならば、各々の生地や糸の特性を手先で理解しながら仕立てるから。そしてそれをバランスよく折り込んでいく作業は、熟練した職人の勘が頼り。さらに、ふわりと柔らかな立体感を表現するため、ひと針ずつ手で縫っていきます。このように高度な職人技が必要で、一本作るのにも途方もない手間がかかるのがセッテピエゲなのです。
-生地-
普通のネクタイ用シルク生地は、整理と呼ばれる糊付け加工をします。なぜなら、その方が製品としての見栄えが良く、次の縫製も楽だからです。しかし、セッテピエゲを作る程のこだわりあるブランドは、その整理された生地では満足できません。その為、シルク本来の光沢感と柔らかさをそのまま楽しめる、未整理生地を用いるのです。
一枚一枚表情が違う未整理生地の扱いは、熟練した職人しかできません。ましてや、セッテピエゲを折れる職人も年々数を減らしている為、本物のセッテピエゲは、今では非常に希少価値の高いものとなっています。
セッテピエゲの概念
なお、セッテピエゲの概念は意外とあやふや。例えば、4回折ったタイもセッテピエゲと呼んだりします。4回折りですので、そのまま訳せば「クワトロピエゲ」と呼ばれそうです。
と言えども、呼び名についてはイタリア国内でもこれといった基準がないようです。つまり、ブランドがそう呼べば、それはセッテピエゲだと言えるでしょう。
歴史
セッテピエゲは、イタリアファッションの巨匠であるフランコミヌッチ氏が起源と言われています。
フランコミヌッチ氏はフィレンツェの名店「タイユアタイ」のオーナーで、希代の洒落者としても知られます。
事の始まりは、フランコミヌッチ氏がコモの生地屋を訪れた時。片隅に投げ捨ててあった古いネクタイが、偶然にも7つ折りされたものでした。氏はその素晴らしさに気が付き、持ち帰り研究しました。そして自社工場を設立し、職人の手縫いによってそのネクタイをアップデートします。そうすることで、そのネクタイがよりエレガントで完成されたものになったのです。
このエピソードが、現代におけるセッテピエゲのはじまり。
そうして、『セッテピエゲ=タイユアタイ』と、別格の扱いを受ける程になったのです。
そのフランコミヌッチ氏が逝去されて、もうすぐ2年経ちます。
彼が愛したセッテピエゲも、職人の減少により、近い未来に消滅する可能性もあります。
だから、私たちはこのネクタイの素晴らしさを世に広め、後世に残していかなければなりません。
おすすめブランド
本格的なセッテピエゲを楽しめる4ブランドをご紹介します。
先述の通り、セッテピエゲと言えばタイユアタイ(フランコミヌッチ)が第一人者です。
しかし、良いセッテピエゲを作るのは、タイユアタイだけではありません。歴史あるスーツブランドはもちろん、最近のブランドでも素晴らしいセッテピエゲを作ります。例えば、アットヴァンヌッチは10年ちょっとの歴史ですが、タイユアタイと比べても決して見劣りしません。
そして、ブランドによってその特徴や風合いも様々です。色々手に取って、その魅力を感じてみてください。
コーデの際の注意点
本格的なセッテピエゲは、20,000~50,000円と特に高額です。
その味わい深さと高級感から、ナポリの高級ハンドメイドスーツのキートンやアットリーニといったブランドによく合います。しかし、それらのブランドで一式揃えるのは、お金も勇気も必要です。
だからこそ、高級なスーツを揃える前に、まずセッテピエゲを巻いてみてください。それが、ハンドメイドの美しさや使い心地の良さを知るきっかけになると思います。
またセッテピエゲには、下の写真のように剣先が歪んでいる物も存在します。
実のところ、これに異を唱えるのは野暮というものなのです。どうしてかというと、マシンメイドには無いこの温かみや味わい深さこそ、ハンドメイドの魅力だからです。
最後に、このセッテピエゲをきっかけに、この世界の奥深さと魅力を知ってほしいと思います。
それによって、大量生産・大量消費の社会ではなく、”良いものを末永く使う社会”。
つまり、”地球にやさしい社会”の実現へ、皆で進んで行けるからです。